最近、ここのレビューコーナは年に一本紹介するコーナになっているわけですが、2003年は僕的には気に入ったものがなくって、12月に入った段階で「うわー今年、紹介するの無いなぁ〜」なんて危機感を勝手に感じていたわけです。
年間を通して最も気に入った芝居がSky Theaterだったら、それはなんだか寂しいじゃないですか。
そんな気分で年末最後の観劇にいどんだのが、ここ6番シードの『テンリロ☆インディアン』です。実はこの公演、基本のストーリィラインはそのままに、登場人物が全員男の「BOYS」バージョンと、全員女の「GIRLS」バージョンの2バージョン存在するのです(ただし監守……というか現地の警官だけは男性で共通キャスト)。出演者の方と縁あって観に行ったので、僕が観たのは「テンリロ☆インディアン GIRLS」の方。
結果的には観て大正解、といえるような舞台でした。
ストーリィは明快で、「カンザスの田舎町で強盗事件が発生。どうやら犯人は日本人らしい。たまたまその街に来ていた9人の日本人がそれぞれ逮捕され、留置所へいれられた。果たして犯人はこの中にいるのか、いないのか」という基本設定にのっとって、それぞれのキャラクタの立場と思惑とが語られていきます。舞台は留置所のみのワンシチュエーション。推理もミスリードもコメディチックに展開していきます。ミステリィとコメディって舞台だとこんなにマッチするものなのか、という驚きが最初の感想でした。
テンポも良くって、観客席の緊張と緩和とを、見事に舞台の上からコントロールしているように見えました。これはもう脚本の完成度と言うよりないでしょう。満足な気分で劇場をあとにすることができました。
ただ、ひとつだけ疑問に思ったのは、「脚本構成上、あの役を犯人にした方がしっくりまとまったんじゃないかなぁ」的なこと。あとで出演者の方に聞いてみたら、実は脚本の基本稿は「BOYS」の方で、「BOYS」ではその役(に該当する男役)が犯人、「GIRLS」の方は両方観るお客のために意図的に犯人を変えて、それに基づいて伏線を再構成してある、とのこと。両方観れば良かったかなぁ……。
開店花火の公演は、大学時代の後輩が出演することになって前回公演「こまち堂漂流記」を観にいったわけだが、その際には演出云々よりも、脚本が構想のまま未消化で人間もドラマも描けていなかったため、単なる「知り合いの劇団」という評価どまりだった。だから、それほど期待せずに観にいったわけだが、行ってみて吃驚。面白かったし素直に笑えた。ホームコメディが得意な劇団なのかもしれない。「要チェック劇団」に昇格。
内容は割とありふれた、ともすれば前時代的なコメディ。個人的には「てんとう虫の歌」を彷彿とさせる……と書いてみたものの、「てんとう虫の歌」の筋が思い出せないので、めったなことを言うものではないね。えーと、まんが家をめざす少年を主軸に、両親不在で健気に暮らす兄妹の日常・非日常を描く。バックボーンは人情チックだが、基本はコメディ。笑えた。なんだ、できるじゃん。
座長・平田君のワンマン劇団という印象もまだ払拭しきれていないが、今後に期待してみたり。
ひさびさの創像工房。作・演出の風早孝将という方の事実上の引退作、なのかな。
大学のサークルの公演なのだが、そのへんの小劇場の芝居より面白かったので、ここに書きとめておこうと思う。
流れを脚本がしっかり引っ張っていたので、観る方も安心してみることができた。内容を台詞に出しすぎていて詰め込みすぎな感もあったが、ある種ベタな小劇場的な演出がそれらをフォローしていたので、クドくは感じなかった。
忌み子=神という図式がわかりやすく、後半のどんでん返しもすんなり受け入れられた。結末に至るプロセスは、やや強引な気もしたが。
卒業式をイメージさせるラストと、オリジナルの唄に好感。
ムラ社会における忌み子の扱い、なぜ天神は女なのか、外から訪れた主人公たちは客神たりえないのか、いや客神であればこそ神を殺し得たのか、などなど思うところはあったが(というか、勝手にいろいろ考えてしまったのだが)、全体的に楽しく見ることができた。
宮内怜も頑張っていたと思う。今後に繋げて欲しい。
東京芸術劇場で芝居を観るたびに、ここはあまり観劇に適していないな、と思ってしまう。舞台も広いし、客席もしっかりしてるんだけどね、なんでだろ?
それはさておき、劇団第三反抗期。旗揚げして、もう10年になる劇団なのだそうだ。だからというわけじゃないけど、舞台としての構成もちゃんとしてる。テンポがすごく良いってわけではなかったけれど、役者も演出もちゃんとしてる。うん、ちゃんとしているという表現がしっくりくる劇団だった。
ただ、脚本はいただけなかった。あらすじを追っていたら2時間たってしまいました、といった感じ。上っ面だけで会話が成立しているように思えた。主人公の現状と、思い出話とがオーバーラップしていくような構成だったが、その構成に特に大した意味がなかったのが残念。盛り上がりがあるわけでもなければ、観ていて「この先どうなっちゃうんだろう」と思うこともない、悪い意味での安心して観ていられる芝居だったように思う。
その反面、妖精役や子供役の役者は良く動き回っていて、表情も豊かに感じられたし、描写も悪くなかった。特に最初のダンスシーンから、ずっと一人の役者さん(パンフレットを見たら吉長賢治という名前だった。新人らしい)の物凄く魅力的な笑顔が気になって仕方がなかった。これでギャグのひとつでも入っていたら退屈しなかったのに。
全体的な印象としては、俳優養成所の卒業公演のような、観れば観たでそれなりに納得して帰る系の芝居だと感じた。次回に期待。